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 株式会社防災センターに対する差止請求訴訟  仙台高等裁判所で全面勝訴しました

 2021年12月16日、株式会社防災センター(2社)を相手方とする差止請求訴訟の控訴審で、仙台高等裁判所で判決言渡しがありました。中途解約をした顧客に残余代金の一括払義務を課す条項等の差止めをはじめとする全ての契約条項や勧誘行為等の差し止めが認められ、ネットとうほくの全面勝訴という内容でした。

<判決に至る経緯>
 株式会社防災センターは、主に宮城県や東京で消火器の訪問販売を行っている業者ですが、消火器リースと称して期間10年の契約を締結させ、顧客からの中途解約を制限する条項とともに、やむなく解約をした場合には残余代金を一括して支払うものとする条項、その他リース契約にみられるような顧客に重い義務を負わせる不当条項を多数盛り込んだ契約書を使用し違法・不当な営業を行っています。そればかりではなく、「全国一有利な料金」「家庭に消火器を設置することは条例で義務づけられている」などの不実告知や虚偽の内容が書かれたチラシによる勧誘を行っているため、各地の消費生活センターにも多くの苦情相談が寄せられていました。
 20187月に、仙台地方裁判所に本件の訴えを提起した後、当初被告としていた東京都大田区蒲田に本店を置く法人のほかに、首都圏において、中央区日本橋に本店を置く株式会社防災センター(別法人だが同一名称で代表者も同一人)が消火器の訪問販売を行っており、東京で同社を当事者とする裁判が行われていることが判明しました。そこで、20191220日に、同社に対しても差止請求訴訟を提起し、仙台地裁で法人2社を被告として併合審理が続けられました。
 仙台地方裁判所の裁判は2021年1月26日に結審し、3月30日に判決が言い渡されました。仙台地裁は、防災センターの多数の契約条項及び勧誘や広告が違法不当なものであることを認定して、当方の請求の多くが認められました。
 しかし、防災センターは、この判決を不服として、仙台高裁に控訴しました。そこで、ネットとうほくも、一審で敗訴した部分について附帯控訴し、両者の不服申立部分について控訴審での審理が行われました。

<判決の概要>
 控訴審の裁判は、昨年11月10日に結審し、12月16日に判決が言い渡されました。仙台高裁では、ネットとうほくが不服として争った原審敗訴部分の条項を含む、全ての契約条項や勧誘行為等の差し止めが認められ、当方の全面勝訴という内容でした。控訴審判決の概要は、以下のとおりです。

1.不当条項の使用禁止
 消費者契約法8条ないし10条に基づき、顧客が中途解約をした場合には残余料金相当額(10年分の全料金)を一括して支払う条項(違約金条項)やリース契約に一般的に見られる借主に重い負担を課す条項(解約制限、消火器の維持管理責任など、当方が請求した各条項の使用禁止を認めるとともに、それに止まらず、防災センターが使用している契約書の全ての契約条項を使用することを禁じました。
 上記の違約金条項については、地裁判決では、消費者契約法9違反を理由に差止が認められていましたが、控訴審では、当方が主張した消費者契約法10条違反による差し止めが認められました。


2.不当勧誘の禁止
 仙台地裁判決と同様に、特定商取引法58条の181項に基づき、防災センターは勧誘に際して以下のような行為をしてはならないとして、防災センターによる不当な勧誘を禁止する請求が認められました。
〇勧誘主体を誤認、混同させる内容を告げないこと
〇住宅用消火器との違いを告げないこと
〇防災センターの契約が全国一有利な料金等と告げること 
〇全ての消火器に点検義務があると告げること
〇全国の家庭に消火器の設置を義務づける条例があると告げること
 このうち、「住宅用消火器との違いを告げないこと」は地裁判決では請求が認められなかったのですが、高裁では逆転勝訴となりました。

3.広告の制限
 景品表示法30条1項1号2号に基づき、防災センターが使用するチラシに以下の表示をしてはならないとして、防災センターによる不当表示を禁止しました。
〇契約が全国一有利である
〇当該消火器が最高級ブランドである
〇防災センターが提供する各種サービスは無料である

<本判決の意義>
 防災センターは、20年近くも前から、宮城県内を中心に、上記勧誘文言のような違法・不当な勧誘による消火器の訪問販売を行い、高齢者を中心に多大な被害を生じさせてきました。同社が、度重なる行政処分にもかかわらず、悪質な商法を継続してきたことに対し、仙台高裁は、その営業が違法であることを認め、そのような営業を全面的に差し止めることを命じており、その内容は、これまでの差し止め請求訴訟には見られない厳しいものです。
 また、個別の問題条項の差し止めに止まらず、契約条項の全てを消費者契約法により無効として差し止めを認めるという判決はこれまでの例がないものであり、悪質商法による被害救済のための画期的な法理論ということができます。
 この判決を通じて、適格消費者団体の差止請求訴訟には、業者の個別的な契約文言や勧誘行為を停止させるだけではなく、悪質業者の違法・不当な商法それ自体を抜本的に止めさせるという、強力な機能が備わっていることを認識しました。
 防災センターが、本判決を不服として最高裁判所に上告をする可能性は残っておりますが、長きにわたって続いた防災センターによる被害が、このような判決を機に根絶されることを期待しています。

(資料)
 1 判決文 
 2 求めた裁判と判断結果一覧 


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